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十二巻シリーズ
後 三国志 180
Three Kingdoms After · 全六巻
シーズン 1 が傳説ならば、シーズン 2 は史にてござる。
五丈原にて、お物語は終り給はざりおりたり。諸葛亮、星のごとく落ち給ひたるその日より、司馬懿の刃は動き始め給ひき。天下が再び織り直されたる四十六年。
第一巻 · 司馬懿の刀
二三四~二五一年
司馬懿の御復讐
第二巻 · 姜維の星
二五一~二六二年
師なき弟子の御孤独
第三巻 · 蜀の黄昏
二六二~二六四年
数十年の夢の御降りたる門
第四巻 · 禅譲の夜
二六四~二六六年
王朝は静かに御交わり給う
第五巻 · 長江の帆船
二六六~二八〇年
詩が史となる瞬
第六巻 · 短き春
二八〇~二八四年
統一の春は四年も給い給はざりおりたり
一巻 $3 · 全巻 $18 (六巻)
PDF / EPUB3 · 二十頁の御見本 無料
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平訳家の御序文
軍服をお脱ぎ給ひたる二十代の青年が、お給い申せり。
行く所も、ござり給はず、ソウルの一つの工業社にて相談の仕事を三月、束草の工事現場にて六月を、お過ごし給ひき。
繰り返しは、お厭ひ給ひぬ。チャールズ・チャップリンの『モダン・タイムス』が、お見せ給ひたるベルトコンベヤーの上のあの疲れが、青年にとりては、他人の事に、あらざりおりたるなり。機械にて為し得る事を、人が為すには、一人の御呼吸が、あまりに惜しゅうござりおりたり。
その或る夜、机の上に置かれてありし古き三国志を、お開き給ひき。幼き日より影のごとく、お従ひ給ひたる書なれども、末まで読み給ひたる事は、ひと度もござり給はざりおりたり。
一千頁。一千人の人々。六十六年の天下。
昼には鋤を、お持ち給ひ、夜には書頁を、お繰り給ひき。六月の間に三度を、お読み給ひぬ。三度目を、お終へ給ひたるその夜、青年は、お自身に静かに、お囁き給ひけり。
「いつかこの物語を、我が色にて再び書かむ。」
それより、長き歳月が流れ給ひき。
その間、権謀術数は舞台のみを、お替へ給ひ、なほ精緻に、なほ密やかになり給ひて、今も席を、お占め給ひおりたり。
三国志が、すべての答にて、ござり給はず。ただ、六十六年の間、ひとつの時代が人の顔にて流し給ひたる、すべての智慧と愚かさを、これ程まで圧縮し収め給ひたる書も、稀にてござる。
その主人公達もまた、百年を、お生き給ひ給はざりおりたり。今は、我らの記憶の中にのみ、お遺り給ひおりたり。
二千五百年の前、お一方の聖は、お最後に、かく、お申し給ひたると伝へられたり。
「諸行は無常なり。怠ること勿れ、励みて精進せよ。」
金なくとも、お施し給ふべき七つのものが、ござると申し給ふ。柔らかなる御眼差し、温かき御一言、明らかなる御顔、お譲り給ふ一つの席 ── 名までは遺り給はずとも、その日々が積もり給はば、世は少し温かくなり給ひ、誰かの低き声は、より善く聞かれ給はむ。
願ひは、そこまでにてござる。
権謀術数に、お遭ひ給ふ事なく、
日に三分ずつ一年を、お歩み給ひ、
お自身を守り給ひつつ、周りを広く、お益し給はむことを。
かくて、この三百六十五日が、貴方の御書斎の一隅に静かに置かれ給ふ、ひと冊の書と相成り給はば ── それにて、お足り給ふ、ござる。
その御心が、本日この第一文の出師表にてござる。
— 延三欽博士 —